オーダーメイド殺人クラブ
難しい時期ってあるよね。
そんな中学生女子の難しい時期の物語。
何かと自分に干渉してきて価値観を押し付けてくる母親に対する苛立ち。
ささいな言動で変化するクラスの人間関係。
抗えない死や猟奇的なものへの執着。
この3軸による主人公の心理を描いた話です。
主人公の小林アンは容姿端麗で学校でもイケてる部類のバスケ部所属。
もちろん友達もいる。
でもその友達が.....なんてことはないささいな言動で仲間外れにしちゃったりするんですよね。
このへんは、「ま、あるある。」と思いながら読んでました。
私もありましたね。中学生の頃。クラスでプチサバイバルでしたよ。
母親に対してイラつくのも理解できます。うちも結構アンの母親に似たところがあるし。
これだけしか言われてなかったら「なんだどこにでもある難しい中学生女子のお話か」と思うでしょうが、そう思わせないところがこの本にはあります。
タイトルですよ。
「オーダーメイド殺人クラブ」て。
いや、そんな中二病臭いのに惹かれないから(笑)
そんな時代とっくに終わったってー(笑)
。。。あれ、なんでレジいるんだろ??
どう頑張って頭を捻ればこんな突飛なタイトルが思い浮かぶんですか。
こんなん読者の興味ぐいぐい惹いてしゃーないじゃないですか。
死や猟奇的なものに執着するあまり、自分から進んで死に方をオーダーメイドして、
クラスの根暗男子、徳川くんに「あたしをこうやって殺して!」と懇願する。
猟奇的で耽美的なもの・コトが好きな小林アンちゃん。
――「首が発見され」という文章を見ただけで、自分の喉にそっと手をあててしまう。
そしてゾクゾクした。
――家に帰ると、「少女コレクション序説」をすぐに開いた。目次を見て、胸がときめく。「人形愛」「犠牲と変身」「幻想文学」「近親相関」「コンプレックス」
私自身、こういうのをモチーフしにた作品を見てときめくまでは感じないけど、何か吸い寄せられる感覚はあったと思う。
どこか遠くの、異世界で起こっているもののように感じて興味そそられるからかもしれない。
アンちゃんにはお気に入りの写真集があるのだけど、その中でも、水に沈められた自分の切断された腕を見ている少女の写真がお気に入り。
クラスの根暗男子、徳川に「これと同じようにして殺してくれ」と頼み、殺人までの計画を綿密に進める。
最終的に実行するのかというと、実行しません!
アンちゃんは殺されません!
ここが私は好きです。これだけ猟奇的でデンジャラスなことを計画していたくせに、肝心の徳川少年が当日に姿を見せないという。
結局平和に着地するところに安心するから。
私たちは日常をつまらないと思って何か刺激を求めがちだけど、本当は現実的で模範的なことに頼るのが好きで自然と安堵を求めているのだと思います。
非現実の淵に立ったけど、そこからダイブすることはできなかった、ただの平和な中二病な考えに踊らされていた少年と少女だったわけです。
なんともほんわかさせられるじゃないですか。ちょっとイタくて歯がゆい青春じゃないですか。
もし、この殺人が実現していたら?
アンは死に、徳川少年はアンを殺した罪を背負って生きる?
徳川少年は自殺する?それで?何を得るのかな??
という風になってしまって綺麗に収まらないと思う。何より後味が悪すぎる。
実現しないまま、月日がたっているシーンが最後に描かれているんですが、
「あの日私は死にきれなかったまま、余生を生きている」というアンの心情が書かれている部分がなんとなく印象に残っています。
月日がたったと言えど、大学生なのに「余生」かあ。
まだまだこれからだってのにもう生き切ったかのように感じられて若干切ないです。
中学時代の自分を、いつかは「そんな自分もいたなあ」と愛すべきキャラクターとして自分の思い出に組み込めるといいね。
小林アンちゃんの未来に良いことがありますように。
Yuka.
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